最近、ご年配の方が道路脇から今か今かと一歩を踏み出そうと右側だけを伺っていたり、見るからに危険な横断をしている姿を見て、ヒヤッとする機会が多くなりました。
もちろん、若い世代や子供の危険な横断も目にしますので、何もご年配の方だけが危険なわけではありませんが、2021年(令和3年)歩行中に交通事故で亡くなった方の内、4分の3以上が高齢者(65歳以上)というデータを見つけたのです。(警察庁まとめ)
全体の歩行中の死亡事故は年々減ってきているのですが、高齢者の割合が統計以来最も高くなったというデータを見て「高齢者」に焦点を当ててみました。
ドライバーや家族を含め、多くの人達が事故の多い場所や時間帯などの状況を知ることで、たとえ1件でも事故が減ってくれればという思いから、自分でも検証してみようと思いました。
今日は、実際に私が検証した内容を含め、ご年配の方が歩行中に合う事故の状況をわかりやすく、お話しします。『どんポジ』のポジといいます!
実際に検証してみました
- 自宅近くの片側一車線の道路(約6m)を歩いて渡る時間
- 道路を渡ろうとする時、車がどの辺の位置なら渡れる(大丈夫)と判断しているのか
- 自宅に戻り大丈夫だと思った車の位置から自分までの距離をGoogleマップで測定
- 車の速度は法定速度で計算
渡れると思った車の位置から、自分までの時間を数値にしてみると、あっという間に衝突してしまう計算になりました。(調べた場所は信号機のある横断歩道でしたので、無事に渡れましたが・・・笑!)
実は、60歳辺りから歩行速度の低下や減少が明らかになることがわかっています。本人が自覚することが事故を未然に防ぐ一番の対策になるのですが、気持ちは若いままのご年配の方が多いようですので、状況判断も中々難しくなるようです。
年齢を問わず、実際に事故が多く起きる状況を知っておくだけで、気を付け方が違ってくると思います。せめて、周りの人たちが、その事実を知っておくことも事故を未然に防ぐ大きな手段の1つと感じました。
いずれ周りの人たちも必ず高齢者になりますので、ここで今のうちに自覚しておくのもいいかも知れません・・・よね。笑!
後ほど、検証の詳しい結果をお知らせします。
包丁付きの車
昔、家族に言っていたことを思い出しました。それは、
「車は、ボンネットの前に包丁を付けて走ってるのと同じだよ!」
実際は、それ以上に車は危険なのですが、横を走っていく車にも慣れてしまって危機感が薄れていると感じていました。
先の尖った包丁を付けた車が走ってくれば、チョット触れただけでも大変なことになる!と、想像するだけでゾゾっとして、無理なことは絶対にしなくなるだろうと思ったのです。ちょっとオマケでした!笑
横断歩道以外を横断中に多い
歩行中の死亡事故は、相手が四輪車(以下:車)で93.5%という高い数字が出ています。また、注目したい重要事項は、交通ルールに違反しているケースが多く見られるということです。
逆に考えると、交通ルールを守りさえすれば、高齢者の歩行中の事故が激減するということです。
- 横断歩道が近くにあるのに、横断歩道以外の場所で横断する
- 車の速度、距離感、譲ってくれるなどの、判断の誤り
- 車のすぐ後ろや前を横断する
- 道路を斜めに横断する
65歳以上の歩行中の死者数は、横断歩道以外の場所での横断中が45%と最も多く、横断違反や信号無視も続きます。
左から来る車との衝突が多い
道路を横断しようとする際、右から来る車に特に注意をして、左から直進してくる車に対しては、注意が疎かになります。
最も多い横断中の事故は、左から直進してくる車と、横断の後半で衝突するケースであり、71.8%というとても高い数値です。
道路を渡ろうとする時、一歩踏み出た瞬間に危険を感じるのは、自分に近い右から来ている車ですので、右から来る車に注意が集中してしまうのも頷けます。
一方、左から直進してくる車は反対側の車線に位置して、道路の半分より奥を走って来ますので遠くに感じます。一歩踏み出しても危険を感じません。
実際には、左から来る車の距離やスピード、そしてご自分の歩く速さとの判断を見誤って、道路の半分より奥(横断の後半)の、道路を渡り切る前に車と衝突してしまう状況が多いのです。
車の速度や距離感、歩く速さ、また譲ってくれるだろうと思う判断の誤りを原因とした高齢者の25.8%に対し、高齢者以外の方は12.2%という数字があります。この数字をみると、年齢的な身体機能の低下や状況の把握判断が大きく左右していると考えられます。
時間帯は17~19時に集中
高齢者の歩行中の事故が多い時間帯は、特に「17~19時台」に集中しており、平日の中でも月曜日に多いとされています。昔から、夕方の薄暗い時間帯は危ないといわれているのを思い出します。
その次に多い時間帯は、早朝の「5~6時」と「9~10時」となっています。朝のお散歩、病院や外出、そして買い物の時間帯のようです。
自宅から500m圏内が多い
高齢者歩行死亡事故の多くは、自宅から500m圏内で発生していることがわかっています。高齢者の生活圏がそのままデータに関連しているようです。
私たちが生活している身近な500m圏内であれば、何処に横断歩道や信号があるのか、あの道は危ない、などわかっていますので、この機会に家族みんなの安全なルートなどを再確認するのも有効な安全対策だと思います。
片側一車線5.5~9mが多い
では、具体的にどのような場所で多く発生しているのか、気になるところです。
事故の多い道路は、私も検証した「片側一車線の道路」です。
片側一車線という道路は、自分が走る方向の車線が1つという道路です。対向の車線も一車線の所が多いと思いますので、道路全体としては二車線の道路で、センターラインのある街中によくあるバスなども走る普通の道路です。
道路の幅は、5.5m~9.0mでの事故が多く、広くて大きな道路を無理やり渡ろうとした事故ではなく、比較的に渡れるだろうと思える幅の道路で、日常で使っている道路での事故が多いといえます。
検証内容
①は歩行者の「私」です。この位置に立って、まず、
②の「6m幅」の横断歩道をゆっくり渡り切る時間を測った結果は「5.7秒」でした。次に、もう一度①の場所に戻り、信号機が無いと想定して、
③の「左から直進してくる車」が、どの辺りなら渡れそうかを判断して位置を決めて測ってみると、
④の「約50m」でした。
検証結果
この検証で、私が安全に横断できるのかどうかを計算してみます。車のスピードは現場の法定速度である「時速40㌔」として計算します。
時速40㌔の車が50m走るのには何秒かかるか・・・えーっと「時間=距離÷速さ」だから・・・久しぶりの計算なので・・・渡り切った時間を「5.7秒」から「6.0秒」ジャストにさせて下さいまし・・・笑!
これで計算も楽になるし、高齢者の平均の歩行速度である、秒速1メートルにもなりました。笑!
結果、時速40㌔の車は、1秒間に約11m移動するので、50m先の左から直進してくる車が横断歩道の奥(右端)まで来るのに、約4.5秒で到達してしまいました。
ということは、私が道路を渡りきるのに「6秒」としたので、半分渡ったセンターラインで約3秒、さらにセンターラインから後半を渡るちょうど半分の位置の4.5秒の場所で車と衝突してしまうことになるわけです。
実際には、4.5秒は横断歩道の右端までの時間なので、横断歩道の中央を歩いている場合は、4.5秒よりも早く衝突する計算になります。いずれにしても渡り切る前に車は通過してしまうのです。恐ろしやです!
私も判断が甘かった
私が、今なら渡れると考えた「左から直進してくる車の距離とスピードの判断」が甘かったことがわかってしまいました。
そしてもう1つ、今の計算は法定速を守っていることが条件ですが、時速40㌔以上のスピードが出ていたり、ちょっとよそ見をしていた場合は完全にアウトです。
繰り返しになりますが、この場所は信号機と横断歩道のある交差点で安全に検証していますが、信号機、横断歩道が無い交差点の場合を想定して考えています。
そして、その想定内(信号機、横断歩道無し)の場合、高齢者歩行中の事故が多い位置が、交差点の向こう側を右から左に垂直に横断する、
⑤の位置からの横断で、全体の40.3%を占めています。
⑥の右から来る車に関しては、一応注意が行き届いているようです。
まとめ
皆さん、いかがでしたか!
具体的に数字を出してみると、ちょっと怖くなります。あっという間に・・・でした。私の判断も見誤っていたので、次のことを気を付けようと思います。
- 少し遠回りでも、運動だと思って必ず横断歩道を渡る
- 信号を守る
- 十分過ぎる距離感やスピードの判断ができる余裕を持つ
- ドライバーが自分に気づいていると思わないようにする
- 止まってくれるだろう!譲ってくれるだろう!は、やめる!
- ドライバーも「だろう運転」はやめる!
たったこれだけで事故は激減します。「痛い思い」や「イヤな思い」は何歳でもイヤです・・・よね!笑
今日からまた気を付けようっと!
最後までお読みいただき、大変ありがとうございました。
どんな時もポジティブに!の「どんポジ」でした。
参考文献
内閣府 平成29年交通安全白書(概要)I 現況の概要 第1編 陸上交通 第1部 道路交通
第1章 道路交通事故の動向
公益財団法人 交通事故総合分析センター 高齢歩行者の道路横断中の事
警察庁交通局 令和4年における交通事故の発生状況について
東京海上日動火災保険(株) 高齢歩行者との衝突事故を防ぐために
岐阜新聞Web 教えてホームドクター歩行速度と寿命