原発性アルドステロン症(PA)の全容がわかる、体験談と専門医の正確な情報を分かりやすく詳細にまとめたブログです。
以前は治療が難しい病気とされていた原発性アルドステロン症ですが、現在は障害者総合支援法などの対象から除外されています。その理由は、既に治療法が確立しているからです。聞きなれない病名を突然いわれ、不安な方もおられるでしょうが、私も原発性アルドステロン症が完治した1人ですので、安心してこの体験談ブログを読み進めて頂ければと思います。
私も原発性アルドステロン症を疑われた時は、とても不安でした。
・初めて聞いた病名だけど、いったいどんな病気なんだろうか?
・原発性アルドステロン症って治る病気なの?
・アルドステロンって何?
・脳卒中になりやすくなるって本当?
・ホントにこの病気で間違いない?
・副腎が原因なの?
・遺伝するの?
・カリウムも関係してるの?
・検査がたくさんあるの?
・治療は大変なの?
・入院するの?
・費用はどれくらい?
など、日々不安が増えていきました。この不安のすべての内容をこのブログで解説しています。
原発性アルドステロン症という病気は副腎のホルモンが過剰に分泌したことが原因の病気で、多くは高血圧の合併症があります。検査や治療法の進歩に伴い、以前より発見しやすく患者数も増え認知度も上がってきましたが、まだまだ原発性アルドステロン症という珍しい病名をご存じの方は少ないかもしれません。
しかし、今では高血圧症を体験されている5~10%とも20%ともいわれる方が、【原発性アルドステロン症】による高血圧症と推測されています。(なぜ患者数が増えたのか後程、解説します)
現在、高血圧の治療をされている方や夜間尿や多尿の症状でトイレの回数が増えて困っている方は、低カリウム血症を伴う原発性アルドステロン症の可能性も考えられます。簡単な血液検査をきっかけに、この病気が発見され、高血圧が治るかもしれません。私も原発性アルドステロン症の治療後に高血圧症が完全に治った一人です!
そして、病名にある『原発性(げんぱつせい)』という意味は、他の病気が原因で起こったわけではなく、その臓器自体の最初の病気(一次性)という意味と、もう一つは原因不明の場合も原発性と呼びます。因みに、他の病気が原因で起こったものは、二次性、または続発性といいます。
この場合の高血圧は、他の病気である『原発性アルドステロン症』が原因で起こったものなので、原因がハッキリわかっている『二次性高血圧』と言い、一般的な高血圧である原因がハッキリわからない『本態性高血圧』とは違い、治療も異なるのです。
それでは、体験談と共に、
原発性アルドステロン症について、詳しく解説していきます。
- すぐわかる【原発性アルドステロン症】実例を交えた体験談解説(Primary aldosteronism:PA)
- アルドステロンとは?
- 原発性アルドステロン症 体験談① 原因の腫瘍は良性
- 副腎とは?
- 原発性アルドステロン症の症状は?
- 原発性アルドステロン症 体験談② 症状に肩こり・頭痛
- 原発性アルドステロン症 体験談③ 私は脳出血で緊急入院
- 原発性アルドステロン症 体験談④ 私もスクリーニング検査
- 原発性アルドステロン症 体験談⑤ 私のカリウム値は2.4
- 原発性アルドステロン症 体験談⑥ 就寝後4~5回トイレ
- 原発性アルドステロン症 体験談⑦ 原発性アルドステロン症の診断を2回もスルーされた私
- 原発性アルドステロン症に気づかなかった場合?
- 原発性アルドステロン症 体験談⑧ 私も高確率の脳出血
- 偽アルドステロン症
- 原発性アルドステロン症の検査
- 原発性アルドステロン症 体験談⑨ 私は6週間、降圧薬を中止
- 原発性アルドステロン症 体験談⑩ エコー検査では写らなかった
- 原発性アルドステロン症 体験談⑪ 副腎静脈サンプリング検査、局所麻酔だから全部聞こえる
- 原発性アルドステロン症の治療法
- 外科的治療
- 原発性アルドステロン症 体験談⑫ 私はスパッと手術
- 原発性アルドステロン症 体験談⑬ 意外と大きい手術跡
- 原発性アルドステロン症 体験談⑭ 手術は仰向け、じゃなかった
- 原発性アルドステロン症 体験談⑮ 本当に手術で治った高血圧
- 内科的治療
- 原発性アルドステロン症 体験談⑯ 治療法で迷う手術か薬
- まとめ
- 最後に!
すぐわかる【原発性アルドステロン症】実例を交えた体験談解説(Primary aldosteronism:PA)
原発性アルドステロン症とは?
1. 原発性アルドステロン症とは、副腎からアルドステロンというホルモンが過剰に分泌されてしまい、その影響で高血圧をはじめ脳卒中・心筋梗塞・腎不全などの合併症の確率を上げてしまう病気です。また肥満、糖尿病、高脂血症などの代謝の異常を引き起こす可能性もある病気です。
(別名:コン症候群といい1955年にアメリカの医師で内分泌学者ジェローム・W・コン博士が英語で最初に原発性アルドステロン症を発表したとされていますが、その2年前の1953年ポーランド人によって発見され、ポーランド語でポーランドの医学雑誌に掲載されていた!とのことです)
2. 対象は若年から高齢者まで幅広い年齢で認められる病気です。
原発性アルドステロン症は遺伝しないと言われていましたが、近年、第一度近親者に原発性アルドステロン症を発症しているケースが報告されています。遺伝性の場合は、20歳代などの若年での高血圧を発症することがあります。
3. 原発性アルドステロン症は、高血圧を伴う場合が多いのですが、過剰なアルドステロンは直接心臓や血管を傷めてしまうので、正常な血圧でも脳卒中や心不全などが起きやすくなります。
アルドステロンとは?
病名にもある、アルドステロンというのは、副腎(皮質)から分泌されるステロイドホルモンの一種です。
アルドステロンの働きは?
アルドステロンの働きがわかると、原発性アルドステロン症が高血圧を引き起すメカニズムがわかってきます。
1. アルドステロンというホルモンは、塩分(ナトリウム)やカリウム、水分のバランスを保つ生命維持に不可欠な役割を持ち、体内に塩分(ナトリウム)を吸収する働きがあります。正常な状態でアルドステロンホルモンが分泌されていれば問題はなく、必要な塩分(ナトリウム)や水分を吸収して血圧や体液量の調整を行っています。
しかし、今回のようにアルドステロンが過剰に分泌されるとたくさんのアルドステロンが塩分(ナトリウム)を吸収するので、通常よりも多くの塩分(ナトリウム)を体内に摂り込んでしまいます。そして、体内に塩分(ナトリウム)や水分がたくさんある状態になると、結果、血圧が上がってしまうのです。
2. 塩分(ナトリウム)をとり過ぎると高血圧の一因となるので、血液検査でのアルドステロン値が高いと高血圧を引き起こしたりします。
アルドステロンホルモンは、何でたくさん出るの?
普段はうまく調整しているのに、なぜアルドステロンホルモンがたくさん出てしまうのでしょうか!
主な原因は、2つ!
1.副腎皮質※1にできた、腫瘍(良性の腺腫か悪性は癌)が原因
1つ目の原因は、体に2つある副腎の内、左右どちらか片方の副腎に腫瘍ができ、その片方の副腎からアルドステロンホルモンが過剰に分泌している状態です。
※1
副腎皮質とは、副腎を囲む外側部分の黄褐色組織をいい、副腎全体の8~9割が副腎皮質です。皮質に囲まれている中心部分は副腎の内部を構成している副腎髄質(ふくじんずいしつ)といいます。副腎ってほとんどが皮質なんですね!
腫瘍は、良性の腺腫または、悪性の場合は癌がありますが、原発性アルドステロン症の場合、多くは良性の腺腫です。腫瘍がなぜできるのか、原因はまだ不明です。
2.副腎の細胞が増えて腫れたもの(過形成※2)が原因
2つ目の原因は、左右両方の副腎からアルドステロンホルモンを過剰に分泌している状態です。
※2
過形成(かけいせい)とは、腫瘍のように別モノ(違う細胞)のしこり(腫瘍)ができるのではなく、同じ細胞が通常より数が増えた状態です。体積は増加(腫れた感じ)しますが、細胞や構造は正常な組織と同じ状態をいいます。
原発性アルドステロン症 体験談① 原因の腫瘍は良性
副腎とは?
それでは、原発性アルドステロン症と、とても関係が深くアルドステロンホルモンを過剰に出してしまった副腎とは、いったいどんな臓器なのでしょうか?
副腎はどこにある?
副腎は、肺や腎臓のように体に2つある臓器で、左右に1つずつあります。
位置は肋骨(ろっこつ)の一番下(12番目)の裏側(背中の方)辺りです。同じく左右に1つずつある、そら豆形の腎臓(オレンジ色)の上にちょこんと乗っかっている黄色いのが副腎です。
副腎の大きさに驚き
腎臓の大きさはこぶし大で約10~12㎝位、重さは約150gなのですが、その上に乗っかっている副腎の正常時の大きさは数㎝程度で、重さは成人男性の平均が、左の副腎は約6g、女性が5.5gほどで、左の副腎は右の副腎より0.5g重いという、とても小さな臓器で驚きです。
副腎の働きは?
1. こんなに小さくても副腎の働きは、生きていく上で大変重要な役割を持ち、非常に大切なホルモンを作っています。つくづく人間の体って本当にスゴイと感じます。
2. そのホルモンの働きは、ストレスに対処したり、血圧を正常にコントロールしたり、女性ホルモンや男性ホルモンなどの性ホルモンを分泌したりしています。例えば、原発性アルドステロン症の病名にもある、アルドステロンや、コルチゾール、アドレナリン、など聞いたことがありますよね!
3. いくつかのホルモンが血圧や塩分(ナトリウム)の量、水分の量、血糖などの濃度を増え過ぎたり少な過ぎたりしないようにコントロールをしてくれているのが副腎です。
そんな大切な副腎が、コントロールのバランスを崩してしまったのです・・・。
原発性アルドステロン症の症状は?
それでは、次に原発性アルドステロン症の症状ですが、この病気の具体的な症状はあるのでしょうか?
残念ながら、正解は、NO!なのです。原発性アルドステロン症自体には特徴的な自覚症状は無いのが答えです。
しかし、原発性アルドステロン症になると合併症を伴い表れる症状があります。私も原発性アルドステロン症とわかる前にいくつかの症状があったので、私の体験談から実際に表れた症状をお伝えします。注意しないといけない内容(※)も記述しておきます。
1.血圧が高くなります。※3
まず、原発性アルドステロン症で一番の共通した症状は血圧が高くなることです。先にも述べたように、アルドステロン値が高いと高血圧の症状が起こります。
原発性アルドステロン症は血圧の上昇が見られます。したがって次項からの高血圧の症状、高血圧のリスクの各内容は、イコール原発性アルドステロン症の症状、リスクと考えられます。
高血圧の症状は?
またしても、高血圧も自覚症状は無いのです。しかし、高血圧の合併症の症状としての、めまい、動悸、頭痛などや肩凝りの症状が起こることがあります。
原発性アルドステロン症 体験談② 症状に肩こり・頭痛
高血圧のリスクは?
高血圧のリスクは皆さんも色々耳にしてよくご存知かと思います。高血圧は脳、血管、心臓、腎臓などに、臓器障害を引き起こす可能性が高くなるといわれています。と、サラッと書いてしまいましたが、よく見ると、命に係わるリスクが多く、とてもサラッと書いてはいけない内容です。(スミマセン、笑!)
原発性アルドステロン症 体験談③ 私は脳出血で緊急入院
まさか自分が・・・!本当にいきなりでマイッタ脳出血の体験記事は、こちらです。こんな症状の時もあるのです。おかしいと思ったらためらわず、すぐに救急車を読んで下さいませ!1分でも早い方がイイです。(マジです。笑)
2.カリウム値が下がる場合があります。※4
アルドステロン値が高いと低カリウム血症になる場合があります。
以前は低カリウム血症が主要な原因
今から約20年前、以前、原発性アルドステロン症の症状は、高血圧と低カリウム血症を引き起こすと考えられており、低カリウム血症も原発性アルドステロン症の主要な要因の1つとされてきました。
しかし、検査の進歩もあり2000年以降は血液検査によるアルドステロン濃度とレニン活性比のスクリーニング(ふるい分け)検査が普及したことで、現在では原発性アルドステロン症が多く見つかるようになりました。
原発性アルドステロン症 体験談④ 私もスクリーニング検査
PAC(アルドステロン濃度)>120、で、まずは確かな判定をお勧めします。
原発性アルドステロン症の患者が増えた理由
スクリーニング検査が普及して、なぜ原発性アルドステロン症患者が増えたのかといいますと、今までは原発性アルドステロン症を判断をする場合、低カリウム血症が重要視されていたので高血圧の症状はあっても、低カリウム血症の症状が見られなければ、原発性アルドステロン症とは判断していなかったわけです。
しかし、スクリーニング検査で低カリウム血症が見られない患者でも原発性アルドステロン症だという検査結果例が多く見つかり、患者数が増えたというわけです。日本循環器学会の発表で、2000年以前の低カリウム血症でのスクリーニングでは、多くの原発性アルドステロン症患者が見逃される可能性があると指摘しています。(今までスルーされてた?コワ)
現在の低カリウム血症併発は30~40%
近年、低カリウム血症を伴う原発性アルドステロン症の症例は30~40%といわれ、以前のように低カリウム血症で原発性アルドステロン症を判断とする目安度は低くなっています。
カリウムとは?
カリウムというのは、人間の必須ミネラルのひとつで、ほとんどが細胞内にありますが一部血液やリンパなどにも含まれている電解質です。カリウムは神経や筋肉、細胞が正常に機能するのに必要な物質でもあります。低カリウム血症は高カリウム血症ほど突然死などの緊急治療は要しませんが、それでも低カリウム血症の影響も大きいので、カリウムのバランスはとても重要です。
カリウムの働きは?
原発性アルドステロン症の場合、なぜカリウム値が下がる場合があるのでしょうか?
1. カリウムは腎臓の老廃物の排泄なども促しますが、アルドステロンが副腎から過剰に分泌され、体に塩分(ナトリウム)を多く摂り過ぎると、今度は、体が余計な塩分(ナトリウム)を体外に排出して血圧を下げようとします。その働きをするのがカリウムです。
ナトリウムと同じ量のカリウムを排出
カリウムは余分な塩分(ナトリウム)を体外に出す時に、その塩分(ナトリウム)と同じ量のカリウムも一緒に排出するのです。たくさんの塩分(ナトリウム)を出すためにカリウムもたくさん減ってしまうのです。
そして、カリウム濃度の基準値下限の3.5より下がってしまうと、低カリウム血症となるわけです。濃度の測定は、簡単な血液検査でわかります。チクッ!(基準値は検査機関や病院で変わることがあります)
原発性アルドステロン症 体験談⑤ 私のカリウム値は2.4
低カリウム血症の原因は?
主な低カリウム血症になる原因としては、
①食事からのカリウムが不足している。
②何らかの原因で、腎臓から尿と一緒に排出されるカリウムが多すぎる。
③血中から細胞内にカリウムが取り込まれる。
などがあります。
私の低カリウム血症の原因は、②の腎臓から尿と一緒に排出されるカリウムが多すぎる。がスッキリ当てはまるようです。
低カリウム血症の症状は?
低カリウム血症を伴う原発性アルドステロン症だった場合、低カリウム血症の症状が出ることがあります。軽度の場合の症状はほとんどわからないといわれていますが、私の体験談から実際に表れた症状を、赤い字にしました。
1.高血圧。
2.めまい。
3.疲れやすくなる。
4.筋力低下。
5.筋肉痛やけいれんが起きやすい。
6.手足の脱力感。
7.四肢麻痺。
8.知覚障害。
9.多尿・夜間尿。
10.多飲。
11.食欲不振。
などの症状です。
3.多尿・夜間尿
私の体験したハッキリした自覚症状だったので、あえて重複しますが低カリウム血症を伴った場合、喉が渇き水をたくさん飲みたくなったり、1日の尿の回数や夜間の尿の回数が増えることも原発性アルドステロン症の症状でした。
原発性アルドステロン症 体験談⑥ 就寝後4~5回トイレ
脳出血をやる前にこの症状で原発性アルドステロン症がわかってたらなぁ・・・、残念!笑
注意しないといけない内容(※3・※4の注意点)
原発性アルドステロン症の症状で、注意しないといけない内容として高血圧と低カリウムにそれぞれ※を付けました。
・まず、高血圧ですが、原発性アルドステロン症のほとんどの症例は高血圧の指摘がきっかけで発見されていますが、高血圧の症状が無い症例も稀にですがある、ということ。
・次に低カリウムですが、カリウムもアルドステロンホルモンの作用でカリウムの排泄が増えることから、私のように低カリウム血症を併発した原発性アルドステロン症の場合があります。しかし、原発性アルドステロン症の症状で低カリウム血症を伴う割合は、半数以下なのです。
低カリウム血症が主要の原因だとしていた時代から判断が変わったように、今後も診断やガイドラインが変わることや、新たな発見があるはずです。原発性アルドステロン症に限らず、確率や病名の一般の症状だけに決めつけられることなく、深く広く探っていける医療を身近に求めたいと切に感じています。
原発性アルドステロン症 体験談⑦ 原発性アルドステロン症の診断を2回もスルーされた私
原発性アルドステロン症に気づかなかった場合?
原発性アルドステロン症を見つけるには、この病気を特定して検査をしないと発見しずらい病気です。しかし、検査自体は簡単な血液検査で、前記したアルドステロンホルモンやレニンというホルモンの数値から前へ進めます。費用も手軽で痛みも程よくチクッ!
発見しづらい理由は?
なぜ、発見しずらいのかといいますと、原発性アルドステロン症自体の特徴的な症状はなく、原発性アルドステロン症によって引き起こされた高血圧などの二次的な症状が表面に出るからなのです。
例えば、表面に出ている症状が高血圧の場合、一般の高血圧(本態性高血圧:約9割の方がこの高血圧です)としての治療が始まります。
本当は原発性アルドステロン症が原因である二次性高血圧なのですが、高血圧の症状自体は、本態性高血圧も二次性高血圧もほぼ同じなので、気づきません。原発性アルドステロン症はまだまだ珍しい病気なので、私のように2回もスルーされることが普通に起きてしまいます。
その為、実際には現在の高血圧症患者の中に、まだまだ多くの原発性アルドステロン症の方が潜んでいると考えられます。
それでは、気づかなかった場合の内容を見ていきます。
1.高血圧症になる
先に説明したように、原発性アルドステロン症は一番の共通した症状である高血圧を引き起します。
『血圧が高いから、あなたは原発性アルドステロン症です!』と診断されることはまずありません。しかし、原発性アルドステロン症になると、ほとんどの方は高血圧になるのです。
高血圧の症状は特に自覚症状はなくサイレントキラーと言われており、気づかないまま長期間放っておくと、血管などを損傷し高血圧症の合併症である脳卒中、心臓病、腎臓病、糖尿病、高脂血症、眼底出血による失明、などの原因になることがあります。
二次性高血圧の治療が必要
しかし原発性アルドステロン症を見落として、一般の高血圧の治療をして血圧が少し下がったとしても、安心はできません!
なぜなら、この高血圧は二次性高血圧で一般の高血圧とは原因が違うからなのです。そのはっきりしている原因の原発性アルドステロン症の治療をしないと治らないのです。
先にも述べたように、原発性アルドステロン症になると、過剰なアルドステロンが直接、血管や心臓などの臓器にダメージを与えますので、その治療をしないとリスクがどんどん広がってしまいます。
二次性高血圧は他にも、クッシング症候群、褐色細胞腫、腎血管性高血圧、甲状腺機能亢進症などがあり、原因がはっきりしている高血圧は、まだ他にもあります。
2.合併症の確率が上がる
一般の高血圧も、とても怖いのですが、原発性アルドステロン症の場合、年齢・血圧が同等の一般の高血圧と比べると、脳卒中、心肥大、心房細動、冠動脈疾患、心不全などの脳、心血管などを高率に合併します。
脳卒中では、約4倍、心筋梗塞で約6倍の確率が上がるという報告もあり、一般の本態性高血圧よりも怖い高血圧なのです!!!
原発性アルドステロン症 体験談⑧ 私も高確率の脳出血
偽アルドステロン症
漢方薬の副作用で有名なのが、甘草(かんぞう)による『偽アルドステロン症』という、原発性アルドステロン症の症状がすべて表れる病気がありますので、少し触れておきます。
対象は、統計で29歳から93歳で男性よりも女性の発症が多く、50歳~80歳代が全体の80%です。
甘草とは?
甘草は別名を『リコリス』といい、原産地は中国、南ヨーロッパ、中央アジアなどで、古くから薬として使われ、文字どおり甘い草で漢方薬をはじめ醤油やお菓子の甘味料としても使用されていますが、痛み止めの効果もあるので、のど飴などにも使用されていることもあります。
症状は?
原発性アルドステロン症を英語で最初に発表したコン博士が1968年に、甘草の大量摂取が原因で低カリウム血症を伴う高血圧の症例を報告しました。甘草の成分のグリチルリチンの作用で、原発性アルドステロン症の症状がすべて現れることがあり、アルドステロンも過剰に出ていないのに、過剰なアルドステロンがあるかのような反応があります。
具体的な症状としては、手足の力が抜けたり、頭痛や筋肉痛、身体がだるかったり、痺れや喉の渇き、動悸などの症状があり、進行すると立てなくなり歩けないほど重症化することもあります。
原因は?
甘草の主成分グリチルリチンが含まれたかぜ薬や胃腸薬、肝臓の病気の医薬品が主な原因になります。服用してから10日以内の発症から、数年間服用後の発症までの報告があり、服用期間に一定の傾向はありませんが、使用開始から3ヶ月以内の発症が約40%を占めています。また薬の服用を中止した2日後には改善すると考えられています。
甘草は漢方薬エキス製剤の7割に含まれているので、遭遇しやすい漢方薬の副作用として有名です。
原発性アルドステロン症の検査
血液検査と画像検査
原発性アルドステロン症の検査は、前記の簡単な血液検査から始まり、疑いが濃くなるにしたがってCTやMRIでの検査が待っています。
血液検査の注意点
血液検査を行う場合、採血時の姿勢や食塩の摂取量も影響します。そして先にも述べたように、原発性アルドステロン症の検査をする場合、既に高血圧の人が多く、降圧剤を服用しています。その服用している降圧剤も検査に影響する種類があり正確な検査ができないのです。
その場合は、影響する薬の服用を中止し、しばらく期間を開けてからの検査になります。アルドステロンとレニン比の測定にも影響しますが、他の原発性アルドステロン症を判定する機能確認検査でも影響します。
原発性アルドステロン症 体験談⑨ 私は6週間、降圧薬を中止
オルメテックOD錠20mg(オルメサルタン)
アルダクトンA錠25mg(スピロノラクトン)
の2種類で、
カルデナリンOD錠4mg(ドキサゾシン)
アダラートCR錠20mg(ニフェジピン)
が、追加されました。
画像検査の注意点
CTの画像診断で、微小な病変は発見されない場合が全体の3割近くあります。腫瘍が写らないからと完全に安心はできません。
原発性アルドステロン症 体験談⑩ エコー検査では写らなかった
機能確認検査
そして次は、内分泌内科のある病院で、原発性アルドステロン症を判定できる機能確認検査の必要が出てきます。迅速ACTH負荷試験いう検査や、生理食塩水負荷試験、カプトプリル負荷試験という検査など数種類の検査結果から原発性アルドステロン症を判断します。
検査での痛みは、注射針のチクッ!だけです。初心者の看護師さんやお医者さんに当たった時は、世のため、人のため、だとあきらめてガマンして下さいませ。私も貢献しました。笑
1.カプトプリル負荷試験
2.フロセミド立位負荷試験
3.経口食塩負荷試験(または、生理食塩水試験)
の内、2種類以上の陽性で原発性アルドステロン症としていますが、日本高血圧学会や米国内分泌学会は1種類以上の陽性で原発性アルドステロン症を確定しています。何で違うの?笑
副腎静脈サンプリング検査
そして、いくつかの検査の結果が陽性で、アルドステロンが過剰に出ていることがわかり病名が原発性アルドステロン症と確定され、治療に手術を希望すると、今度は左右どちらの副腎からアルドステロンが過剰に出ているのか、または両方から出ているのかを調べます。
太ももの付け根の静脈から細い管(カテーテル)を副腎までスルスルと運び、副腎静脈に挿入して左右それぞれの血液を採取(サンプリング)して判断する、副腎静脈サンプリング検査(カテーテル検査)を行います。
この検査は高度な技術が必要で、特に右の副腎サンプリングの場合、血管走行により難しい角度の場合は検査を断念したり、血管に傷を付けてしまうことがあります。
この検査は、過剰に出ているアルドステロンが、左右どちらからか又は両方からか、即ち手術か薬かの治療法を見極める重要な検査となります。
検査入院のメーンイベントである副腎静脈サンプリング検査に関しての内容は、体験記13から続きます。ちょっと恥ずかしい前日の準備や看護師さんのコマネチの話しからです。
原発性アルドステロン症 体験談⑪ 副腎静脈サンプリング検査、局所麻酔だから全部聞こえる
検査入院費用の合計額
10日間の検査入院費用の食事代も含めた合計額は、492,140円でした。限度額適用認定証で、この金額よりとってもお得になります。ふ~!
原発性アルドステロン症の治療法
では次に、治療法です。冒頭にも書きましたが既に治療法は確立されておりますので、ご安心下さい。状況により大きく2つに分かれます。1つは外科的治療での手術、2つ目は内科的治療の薬剤治療です。
治療の考え方
原発性アルドステロン症は副腎から過剰に出ているアルドステロンホルモンが原因で血管や臓器に損傷を与え重篤な合併症になる確率を高めています。
外科的治療でも内科的治療でも、治療の考え方としては、その原因であるアルドステロンホルモンの過剰な分泌を抑えて正常な分泌に戻せればいいわけです。
外科的治療
外科的治療は、原因の腫瘍を元からスパッと取り除きます。しかし、手術を希望しても、すべての方が希望通りに手術治療ができるわけではありません。それは、初めの方の『アルドステロンホルモンは、何でたくさん出るの?』の項目に関係しています。
1. 原因の1つである、片方の副腎にできた腫瘍が原因の場合は基本的には手術が可能です。
2. 手術の場合、副腎にできた腫瘍を摘出する場合、腫瘍だけを取るのではなく、腫瘍と一緒に副腎全部を丸ごとひとつ摘出する手術が一般的です。2つある副腎を1つだけの摘出なら問題はないという見解です。
3. 一部の病院では病変の状況により腫瘍だけを取り除く部分切除も行うそうです。
4. 手術の意向が決定したら、今度は手術ができる身体かどうかの検査があります。
原発性アルドステロン症 体験談⑫ 私はスパッと手術
手術方法は?
手術方法は、腹腔鏡(ふく くうきょう)手術といい、この手術も高度な技術を要します。術名は、『腹腔鏡下副腎摘出術』です。
手術の時は、
①手術着(薄いガウンです。)
②T字帯(フンドシです。)
③血栓予防の弾性ストッキング(少しきつめのストッキングです。)
のみを身に付けて手術室に入ります。指輪とか時計とか入れ歯とか外せる物はすべて外す指示があります。
腹腔鏡手術とは?
腹腔鏡手術は、従来のような開腹手術とは違い、お腹に何カ所かの小さい穴を開け(病気の種類や病変の位置などにより、それぞれ変わります)、そこから長い棒(ポート)を使い、炭酸ガスをお腹に入れて膨らませ、手術をしやすいようにスペースを作ります。
そして、棒の先にカメラ(腹腔鏡:内視鏡)やメス、摘まんだりする手術器具を付けたり交換したりしながら、お腹に入れたカメラからの画像を大きなモニターを見ながら手元で操る手術です。
原発性アルドステロン症 体験談⑬ 意外と大きい手術跡
原発性アルドステロン症 体験談⑭ 手術は仰向け、じゃなかった
手術入院費用の合計額
7日間の手術費用と食事も入れた合計額は、890,010円でした。退院日の内容がこちらです。この金額も、限度額適用認定証でお得になります。っていうか、保険です。笑
一番気になる術後は?
データで、手術後に降圧薬の量が減った人は多いのですが、術後に全ての降圧薬を完全に中止できた人は、半数以下だったとの報告があります。しかし、たとえ高血圧が残っても、手術前と同様な高度の高血圧ではなく、コントロールがしやすい高血圧とのことです。私の場合は・・・!
原発性アルドステロン症 体験談⑮ 本当に手術で治った高血圧
内科的治療
両方の副腎からアルドステロンホルモンが過剰に出ている過形成が原因の場合は、副腎を2つともは取れないので、必然的に薬物治療となります。
内科的治療(薬物治療)は、
①両方の副腎から過剰なアルドステロンホルモンが出ている人。
②手術をしたくない人。
③手術をする体力に不安がある人や他に問題がある人。
などの人が薬物治療になり、降圧剤で血圧を下げて、アルドステロンの作用を抑える拮抗薬、スピロノラクトン、エプレレノン(商品名:セララ)などで治療します。原発性アルドステロン症の多くはこの方法でコントロールが可能になりますが、原則として薬物治療は生涯継続が必要です。
副作用が心配
薬を長く飲めば、それだけ体調に影響することが心配です。このスピロノラクトンという薬は、作用は強力ですが男性は女性化乳房、女性は月経異常などの副作用が心配されています。エプレレノンはスピロノラクトンに比べると作用が違う分、性ホルモン受容体への影響が少ないのでスピロノラクトン特有の副作用頻度が低いのがメリットとしています。
原発性アルドステロン症 体験談⑯ 治療法で迷う手術か薬
結果、手術を選択し副腎を摘出したのですが、今では良かったと感じています。
まとめ
参考文献
厚生労働省 重篤副作用疾患別対応マニュアル 偽アルドステロン症
順天堂大学医学部付属順天堂医院泌尿器科
副腎静脈サンプリング|KOMPAS
東京女子医科大学病院 ”原発性アルドステロン症”(の疑い)で入院予定の患者様へ
社会福祉法人 三井記念病院サイト 医療最前線 原発性アルドステロン症
最後に!
チクッ!