「アドレナリン」は、不安や緊張、焦りやイライラを感じた時に過剰に分泌します。例えば、スーパーの特売日のような狭い空間に人が大勢入り乱れていると、胸が「ざわざわ」して具合が悪くなったり、イライラして攻撃的(特に男性)になったりするのもアドレナリンの過剰によるものと考えられています。
一方、スポーツなどの場合は、ヨッシャー!と気合を入れると、脳が闘争モードに入り、交感神経が活発化して「ノルアドレナリン」っていう、とっても似ている名前の物質が出ます。と思ったら、今度は副腎の中の髄質っていうところも刺激して、血液中にアドレナリンが分泌され、運動能力を上げてくれます。
具合が悪くなったり、運動能力が上がったりのアドレナリンは良いのか悪いのか迷ってしまいますが、どちらもアドレナリンなのです。
今日は、アドレナリンを少しだけ詳しく知り、アドレナリンの「いいとこどり」から、体も精神も強くするコツを見つける内容です。『どんポジ』のポジといいます!
アドレナリンとは
アドレナリンは「神経伝達物質」または「ホルモン」として働く物質で、昇圧薬(血圧を上昇させる働きの薬剤)としても利用され「薬物」でもあります。
アドレナリンは「やる気ホルモン」とか「怒りのホルモン」とも呼ばれていますが「闘争・逃走反応」といわれているホルモンがアドレナリンやコルチゾールです。戦うか逃げるかのどちらにしても有利になるように、パフォーマンスを高めてくれます。
具体的には、生き延びるために筋肉を動きやすくしたり、体を動かすと酸素もたくさん必要になるので、血圧や心拍数を上げて酸素を多く取り込めるようにしたり、瞳孔を開いて周囲の敵や逃げ道が良く見えるようにしたり、膀胱も広げてトイレにも行かなくていいようにします。
生き延びようと必死に戦ったり逃げている時に「ちょっとタイム!トイレ行ってくるね!」じゃ、笑っちゃいますが、そこまで考えてくれる身体ってスゴイです!
でも「闘争や逃走」とかは、ピンときませんので、スポーツや特売日の例えに戻しますと、スポーツ選手はより高度な動きができるように、気勢を上げたり、観客に手拍子を求めたり意識してアドレナリンを出してパフォーマンスを高めています。「ゾーン」という極限の状態もこれに関係しています。
しかし、アドレナリンが出すぎてしまうと、不安や緊張、イライラを感じやすくなり、スーパーの特売日のように逆効果になってしまうのです。さらに、アドレナリンが不足して分泌が間に合わないと、抑うつ状態になると考えられています。
このような状態は、複数のホルモンが関係して重要な働きをするだけに、分泌が多すぎても少なくても心身に大きな影響を及ぼしますので、バランスがとても大切なのです。
冒頭に、ノルアドレナリンという名前の物質が登場しましたが、アドレナリンとノルアドレナリンは名前もそっくりで、とても似ている作用や深い関係があります。その1つに、交感神経(心体を活発化させる神経)はアドレナリンとノルアドレナリンの2つが作用することで、興奮する、などが挙げられます。
もちろん似ているだけではありません。アドレナリンとノルアドレナリンの大きな違いを簡単にいうと、主にアドレナリンは身体に作用して、ノルアドレナリンは神経や脳に作用するということでしょうか。
生体内では原料も同じチロシン(うつ状態を改善する効果のある材料)という物質からできており、アドレナリンとノルアドレナリンが作られる工程も同じです。そして、何を隠そう、アドレナリンはノルアドレナリンから作られているのです。チロシンからの行程は下記の通りです。
- チロシン(L-チロシン)
⇩ - ドーパ(L-ドーパ)
⇩ - ドパミン(ドーパミン)
⇩ - ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)
⇩ - アドレナリン(エピネフリン)
アドレナリンは、幸せホルモンと言われるドパミンが変化したものなので、幸せを感じるとドパミンが分泌され、ドパミンが出れば自動的にノルアドレナリンが増え、ノルアドレナリンが増えれば、やる気ホルモンのアドレナリンが作られます。ということは「幸せ」を感じると「やる気」が出るようなシステムだということなのですね。とっても心当たりがあるような・・・笑
アドレナリンの働き
私たちがよく耳にするアドレナリンは、興奮剤みたいなイメージを持たれる方も多いと思いますが、先述しましたように、アドレナリンは人間が外敵に襲われたり生命の危機が迫った時など、交感神経が興奮状態になった時、主に副腎髄質から分泌する「ホルモン兼神経伝達物質」です。
交感神経が興奮すると、集中力が高まる覚醒作用があり、不安や危機に対して立ち向かうことができる闘争モードに体と脳が切り替わります。
アドレナリンの主な働きは、交感神経が興奮状態になると、心拍数や血圧・血糖値を上げます。スポーツ選手などは心拍数や血圧を上昇させることによって普段以上の力が出せる状態を作り出します。
覚醒作用を身近なちょっとしたことで例えますと、コーヒーを飲むと眠気がなくなり、頭がスッキリしてやる気になる・・・みたいな感じです。
アドレナリンが過剰だと逆効果
アドレナリンは、闘争などで、戦うか逃げるかの時に有利になるように出る物質と説明されていることが多いのですが、普段の生活ではあまり縁がないことなので、ピンときません。
闘争の相手を現実の生活に置き換えてみると、その相手は、何らかの「ストレス」ということです。
アドレナリンが過剰に出ている時は、不安や緊張を感じやすくなっています。例えば、体の調子が悪い時、大変な病気だったらどうしよう、治らなかったらどうしよう、また具合が悪くなったらどうしようなどと、必要以上に不安や心配が続き、緊張しすぎてしまいます。
アドレナリンが多く出すぎると、不安や緊張が増して「ざわざわ」が強くなったり、攻撃的で「イライラ」して怒りっぽくなったりして、高血圧や不眠症の要因にもなりえます。
体は硬くなり、判断も的確ではなくなります。その結果、不安材料がどんどん出現してきて、不安やイライラの悪循環が起こるのです。
アドレナリンが不足だと抑うつ状態
アドレナリンが不足(ノルアドレナリンが不足するとアドレナリンも不足します)すると、倦怠感や疲労が続いてしまい、快楽を感じにくくなってしまいます。そして全てに意欲がなくなり、抑うつ状態になっていくと考えられています。
まとめ
アドレナリンに限らず、ホルモンや神経伝達物質は重要な働きをしています。多すぎても少なくても大きな影響を与えるとてもバランスが大切な物質なのです。
私たちの体は、常にバランスを取ってくれています。○○が足りなければ補充したり、○○が多すぎる時は減らしたり、絶妙なバランスの上に成り立っているといっても過言ではないようです。
そして、新しい研究によって、昨日までの常識がガラッと変わってしまうのも、まだまだ、体はわからないことだらけの複雑で神秘的なものと実感します。
研究が、人々を助けてくれたり、幸せにしてくれたりすることに、心から感謝です。
最後までお読みいただき、大変ありがとうございました。
どんな時もポジティブに!の「どんポジ」でした。
参考文献
大阪大学科学技術振興機構(JST)「病は気から」の根拠を実験的に証明 交感神経による免疫制御のメカニズムの一端を明らかに
No evidence that depression is caused by low serotonin levels, finds comprehensive review
Bizarre Discovery Shows Your Bones Could Be Triggering The ‘Fight-or-Flight’ Response
Mediation of the Acute Stress Response by the Skeleton – ScienceDirect