「ノルアドレナリン」という物質が過剰に分泌されたり、不足してバランスを崩してしまうと、うつ病やパニック障害などを引き起こすといわれています。(厚生労働省 e-ヘルスネット ノルアドレナリン/ノルエピネフリンより参考)
そもそも、ノルアドレナリンって何?
アドレナリンにノルがくっ付いてるやつ!
ハイ、名前がとっても似ているので間違えやすいのですが、ノル(normal:ノルマル)というのは、元の物質(正規の化合物)というような意味です。
実は、ノルアドレナリンが化学変化を起こしてできるのが、アドレナリンなので、アドレナリンになる前の物質(前駆体)がノルアドレナリンだよ、というような意味の「ノル」です。
ノルアドレナリンもアドレナリンも、同じ過程で作られます。元々の材料が同じで、名前もノルだけ違いの同じ名前ですので、とても関係の深い物質のようですね。その過程で作られる順番は、
- チロシン(L-チロシン)
⇩ - ドーパ(L-ドーパ)
⇩ - ドパミン(ドーパミン)
⇩ - ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)
⇩ - アドレナリン(エピネフリン)
と、こんな感じです。
実は、この物質たち、自律神経やストレスなどの精神的な部分に大きく影響する物質なのです。その1つであるノルアドレナリンは精神を安定させたり、やる気を出させたりする働きもあります。
今日は、とても身近な疾患で日本だけでなく世界中でも患者が増えているという「うつ病」や「パニック障害」などの精神的な病気に「ノルアドレナリン」が深く関与しているということを調べてみました。『どんポジ』のポジといいます!
ノルアドレナリンとは
ノルアドレナリンは、怒りや不安、恐怖などのストレスを感じた時に出る物質です。働きの違いから「怒りのホルモン」や「やる気ホルモン」とか「集中ホルモン」などとも呼ばれています。
ストレスを受けると神経伝達物質としてのノルアドレナリンの分泌が適度に高まり、積極的な行動を起こしやすくしたり、集中力を高め、怒りや不安、恐怖などのストレスに打ち勝つ態勢をとります。
意欲や集中力・判断力が高まり、記憶力などの学習能力も高まりますので、ノルアドレナリンは最高だ!と思ってしまうかもしれませんが、逆に大人数の前で話しをしないといけない時などに緊張して、汗をかいたり、喉が渇いたり、震えてしまうのもノルアドレナリンが原因なのです。
この「適度」というのがとても重要で、ストレス状態が持続するとノルアドレナリンの分泌が高い状態が続いたりノルアドレナリンが不足した状態が続くと、神経症やパニック障害、うつ病などを引き起こすと考えられています。
ノルアドレナリンは主に神経伝達物質として働いていますが、副腎髄質からホルモンとしても分泌されており、血圧の上昇などに作用します。
数ある神経伝達物質の中で、人間の脳が高機能を発揮するためには欠かせない神経伝達物質の1つがこのノルアドレナリンという物質です。
副腎髄質ホルモンは「うつ病」や「パニック障害」にも作用していた
ノルアドレナリンの作用
ノルアドレナリンは、
- 脳内の神経伝達物質
- 自律神経の神経伝達物質
- 副腎髄質から分泌されるホルモン
の、3つの作用があります。
脳内の神経伝達物質
ノルアドレナリンは、主に脳内で神経伝達物質として分泌されますので、不安、ストレス、集中力、怒り、恐怖、痛み、覚醒、判断力など、脳に作用してこれらの感情を生み出します。
自律神経の神経伝達物質
ストレスなどがかかり、ノルアドレナリンが交感神経の情報伝達物質として放出されると、心拍数を上げたり、血圧を上昇させたりして、状況に適した動きやすい状態を作ります。
副腎髄質から分泌されるホルモン
副腎髄質ホルモンとして放出されると、血圧の上昇と基礎代謝の増加に作用します。
ノルアドレナリンの働き
ノルアドレナリンは「うつ病」や「パニック障害」などの精神的な疾患に影響すると考えられています。
ノルアドレナリンもアドレナリンと同じように、目の前の不安や恐怖、痛み、かゆみ、寒暖差、人間関係、精神的、肉体的などに、強いストレスを感じた時、そのストレスに打ち勝つよう分泌され、戦闘モードに切り替わり積極的な行動になる作用があります。
ノルアドレナリンがホルモンとして分泌されると、主に末梢血管収縮による血圧の上昇と生きていくために必要な最小のエネルギーの必要量である基礎代謝率が増加します。
ノルアドレナリンが過剰だと
適度のノルアドレナリンは集中力や判断力などが高まるのですが、ストレス状態が続くことで、ノルアドレナリンが過剰に分泌してしまうと、心拍数や呼吸数、血圧を上げた興奮状態が続き、徐々に攻撃的、イライラや心配、恐怖から取り乱す症状もみられ、パニック障害を引き起こす原因になると考えられています。
ノルアドレナリンからアドレナリンが作られるので、ノルアドレナリンが増えるとアドレナリンも増えてしまい、心拍数も上がり冷や汗などもかくことで、さらにストレスが発生して悪循環になりえます。
ノルアドレナリンが不足だと
ノルアドレナリンが不足すると覚醒度が下がり、やる気や集中力が低下し睡眠障害も起こり熟睡が妨げられるなどの症状が出ます。この症状は、うつ病早期要因の一つといわれています。
前述しましたように、このノルアドレナリンのバランスが崩れてしまうと、パニック障害やうつ病などを引き起こすといわれていますので、その結果を踏まえた研究では、現在、ノルアドレナリン物質を促進したり阻害することで精神疾患の治療に効果が高いということです。
私は副腎が1つなのでちょっと心配でしたが、ノルアドレナリンは、例えば、病気で副腎を2つ共摘出したとしても、ノルアドレナリンは副腎以外でも作られていますのでノルアドレナリンやアドレナリンの欠乏症状は起こらないようです。
ギャンブル依存症にノルアドレナリン関与
私はギャンブルをやりませんが、カードでも競馬でもギャンブルは必ず「勝つ」か「負ける」かの両方があるということは知っています。笑!
その両方とは「利得」と「損失」であり、それを判断する場合に「勝てばこんなに儲かるのか!」のように利得を重視するのか、または「負けたらこんなに損するのか!」のように損失を重視するのか、というような内容の研究を見つけましたのでご紹介します。
この研究の結果は「利得よりも損失に比重を置く傾向の強さに、脳内ノルアドレナリンが関与している」ということを世界で初めて明らかにしたという内容です(2018年)。京都大学・独立行政法人放射線医学総合研究所の研究結果を私なりにわかりやすくかみ砕いたつもりですが、ご興味のある方、また詳しくは直接原文をお読み下さいませ。(文末の参考文献に掲載先を表示しています)
ノルアドレナリンのバランスを保つ
ノルアドレナリンは多すぎても少なすぎても影響の大きい神経伝達物質でありホルモン物質だということがわかってきました。私たちの生活は多くのホルモンや物質のバランスを保つことで安定した精神を保つことに繋がっているということです。
ノルアドレナリンとドパミンのバランスを崩さないように調節して、気持ちを安定させているセロトニンという神経伝達物質も頑張ってくれていますが、ストレスなどが続いてしまうとセロトニンも不足してしまいます。
ノルアドレナリンを増やす
ノルアドレナリンが作られる過程で前述しましたように、チロシンという物質がノルアドレナリンの元の材料になります。このチロシンという栄養素を含む食品の一例は次の通りですのでちょっと意識してノルアドレナリンの材料をゲットして下さい。
- 乳類(牛乳・乳製品・パルメザンチーズ・ナチュラルチーズ・・・etc)
- 卵類(鶏卵・卵白・・・etc)
- 魚介類(にしん・かずのこ・とびうお・煮干し・かつお節・たたみいわし・・・etc)
- 豆類(納豆・落花生・カシューナッツ・アーモンド・・・etc)
- 種実類(スイカ、かぼちゃ・・・etc)
ノルアドレナリンを減らす
ノルアドレナリンとドパミンが過剰に分泌しないように抑えることができるのが、前述しましたセロトニンという物質です。
しかし、セロトニンもストレスが続くことで不足してしまいます。セロトニンを不足しないようにするには、太陽の光(特に朝日)を浴びてリズミカルなウォーキングなどの運動を毎日15分継続したり、セロトニンの原料になるトリプトファンを含む、乳製品、たんぱく質、大豆などを摂ることで、セロトニンが増やせるようです。
セロトニンが十分にあれば、ノルアドレナリンが過剰に分泌するのをセロトニンが抑えてくれるわけです。
まとめ
気分のイライラや落ち込みは、体の中の物質も大きく影響するのですね。
自分の意識のない部分で、緊張し過ぎたり、不安になり過ぎたり、攻撃的になったり、喜んだり、幸福感を感じたり、依存症になったり、という影響は、神経伝達物質やホルモンが作用していたのです。
バランスを崩さないようにするには、色々なストレスに負けないように、まず偏った食事は避けて肉類、魚介も含め、まんべんなく摂り、朝起きて日光を浴びて、適度な運動をすることが基本のようです。
体は1つなので、これらを続けるだけで体調や気分が爽やかになっていきそうです。
食事から調整する場合にも、三日坊主にならないように好きな食べ物から選んでいけば続けられるかもしれません・・・ね!笑。 継続は怪力なり・・・笑!
最後までお読みいただき、大変ありがとうございました。
「どんポジ」のポジでした。
参考文献
厚生労働省 e-ヘルスネット ノルアドレナリン/ノルエピネフリン
国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機 量子生命・医学部門 掲載 ギャンブルへの慎重さに脳内のノルアドレナリンが関与 国立大学法人京都大学 独立行政法人放射線医学総合研究所 https://www.qst.go.jp/site/qms/1704.html