お腹に赤ちゃんがいるって、とっても神秘的で・・・素晴らしいことで・・・不思議で・・・、感動に一人浸っていた記憶がありました(私は夫です)が、妊婦さんはそれどころじゃありませんよね!笑!
ただでさえ大変な毎日を切り盛りしていたところに、かまってちゃんがお腹に来てくれたのですから!大変でしょうが、可愛い家族が増える喜びを満喫して下さい。子どもは無条件の宝物!笑!
さて、本題ですが、最近よく聞く「トキソプラズマ」は、雷でもオーロラでもなければ、細菌でもウィルスでもなく原虫と呼ばれる単細胞の微生物です。
わかりやすく言うと、昔、教科書に出ていた「ゾウリムシ」や「アメーバ」の仲間です。
な~んだ、あれか!
そうなんです、アレなんです!といっても侮ってはいけません。原虫の仲間には重い病気を引き起こす「奴ら」もいるのです。
そして、トキソプラズマは、全人類の1/3以上の数十億人が感染しているとされ、日本国内でも1~2割の人たちが知らないうちに感染し、すでに抗体を持っているといわれています。
トキソプラズマが妊婦さんに感染しようとすると、ちょっとしたハードルを越える必要がありますので、必要以上に神経質にならなくてもいいようです。『どんポジ』のポジといいます!
トキソプラズマとは
トキソプラズマは動物や人に対して、共通して寄生する病原性(感染症を起こす性質)の原虫です。食肉や猫、土や砂などから口に入り感染するといわれています。空気感染や人からの感染はありません。
感染経路
大きく分けて次の3つの感染経路があります。
- ネコのフンや土からの感染
- 食肉(特に生肉)からの感染
- 妊婦さんから退治への感染
1.ネコのフンや土からの感染
トキソプラズマに感染したネコのフンには、トキソプラズマの卵のような「オーシスト」と呼ばれるものが混じっています。
ほとんどの温血動物(周囲の温度に影響なく体温を維持できる動物。哺乳類や鳥類)はトキソプラズマに感染はするのですが、フンにオーシストを排泄するのはネコ(科)だけなのです。飼い犬から感染することはありません。
このオーシストというのは、非常に丈夫で普通の消毒薬では死滅せずに、感染能力は土や砂の中で数か月間持ち続けるといわれています。
公園や砂場、畑など、ネコが排泄しやすい場所は特に注意が必要です。また、庭の手入れをした時や、良く洗わないで野菜を生で食べた時も感染の可能性があります。
ネコは、トキソプラズマに感染した数日から1カ月程度はフンにオーシストが混じることがありますが、その以降はオーシストは出てきません。
人も一度感染すると体内に残り、生涯にわたり共に過ごすことになりますが、免疫機能が低下しなければ、トキソプラズマに悪さをされることはないようです。
2.食肉(特に生肉)からの感染
トキソプラズマに感染した肉を生で食べたり、十分に加熱しないで食べたりすることでトキソプラズマに感染する可能性が出てきます。
- レアステーキ
- 鳥刺し
- 馬刺し
- ユッケ
- 生ハム
- サラミ
- 生乳
などです。
厚生労働省は、生ハム、スモークサーモン、ナチュラルチーズ、肉や魚のパテなどはトキソプラズマとリステリア菌感染の可能性があるとしています。
国立感染症研究所は、食肉からの感染による胎児への影響がある妊婦では、どのような肉であっても中心まで十分に加熱してから食べるように注意喚起しています。調理中の味見をする際にも、十分に加熱してからが安全です。
生の肉を食べないように注意をしていても、調理段階で生肉を切った包丁やまな板をよく洗わずに、生野菜などを調理して食べることでも感染の危険性が出てきます。(トキソプラズマに限らず、鶏肉や鶏肉の汁が付いたまな板や手からの感染で起こるカンピロバクター食中毒なども同様です)
3.妊婦さんから胎児への感染
妊婦さんがもしも、ネコや生肉などからトキソプラズマに感染してしまった場合、胎盤を通じて胎児にも感染する可能性があります。この場合を「先天性トキソプラズマ症」といいます。
先天性トキソプラズマ症は、特に妊婦さんの感染時期により次のような特徴があります。
- 妊娠初期は ➡ 胎児への感染は少ないが ➡ 感染すると重症化しやすい
- 妊娠後期は ➡ 胎児への感染率は上がるが ➡ 軽症の場合が多い
初期は少ないが重症で、後期は多いが軽症ということです。
胎児がもしも感染してしまった場合の影響としては、
- 流産
- 死産
- 脳性麻痺
- 視力障害
- 運動発達の遅れ
- 精神発達の遅れ
などが起こることがあるとしています。誕生時に何の症状がなくても成長とともにトキソプラズマ症の徴候が表れる場合もあるようです。
内閣府ホームページには、胎児に感染すると死産や流産、脳や眼の障害が生じる場合があるので妊婦の方は注意するように呼び掛けています。
必要以上に神経質にならなくてもいいといわれていても、妊婦さんの環境により差はありますが胎児への大きな影響を考えると、一定の注意が必要だと感じます。
トキソプラズマに感染する確率は低い
冒頭に、トキソプラズマが妊婦さんに感染しようとするとちょっとしたハードルを越える必要があるとお伝えしました。そのハードルとは、
感染のハードル
妊婦さんが今までトキソプラズマに感染していないこと!が、トキソプラズマにとっては、ちょっとしたハードルなのです。
逆をいえば妊婦さんが過去にトキソプラズマに感染していればほぼ安心ということです。妊娠前の6カ月以上前であれば、トキソプラズマに感染した場合でも胎児への影響は無いといわれています。
妊娠の数カ月前あるいは、妊娠中に、妊婦さんが初めてトキソプラズマに感染した場合に、その約3割に胎児への感染が起こるという報告もあります。
症状
健康な人が感染しても特に症状はなく、一部の方に倦怠感や発熱程度の風邪に似た症状が続きますが、その内自然治癒します。
免疫抑制状態にある方などは脳炎や視力障害、肺炎など重篤な症状が出る場合があり、トキソプラズマ症が発病と死亡の重要な原因として認められるようになりました。
白血病や臓器移植者、特にエイズ患者では死亡の原因となる重症化症例が認められています。
対策と予防
このトキソプラズマは効果的なワクチンや治療法はありません。胎児への感染の確率は低いといわれても、どうしても心配になります。防ぐことが可能なら防ぎたいものです。
対策
事前の安心対策として、抗体検査を受けること。妊娠してからではなく、妊娠前に抗体検査を受けるということです。
特に普段から生肉を扱ったり、ご自分がネコを飼っていたり、隣近所で放し飼いのネコを飼っていたり、ネコの餌やりをしている人がいたりする環境の方は、抗体検査を受けておくと過去にトキソプラズマに感染したかどうかがわかります。
妊娠前にすでにトキソプラズマに感染していれば抗体ができているので、胎児に感染することはまずありませんので、トキソプラズマ症に対して必要以上の心配の種を消去ることができます。
産婦人科では妊娠初期に、母体の血液からトキソプラズマ抗体を測定する場合が多いようです。
予防
特に妊婦さんの予防としては可能な限り、
- トキソプラズマの感染歴がない方は、ネコのフン、砂場、土、畑などに極力触れない、近づかない
- 庭の手入れをしない
- 生肉、生ハムや長時間低温で煙をかけたスモーク(冷燻法)で加工された食肉製品にもトキソプラズマは感染力を持ちながら生き残っていける条件なので食べない
- 豚肉に限らず、肉類はすべて中心部のピンク色がなくなり、肉汁が出なくなるまで、十分に加熱する
- 野菜や手をよく洗ってから食べる
- 生肉などを切った包丁やまな板は必ずよく洗う
- 肉は-20℃で8時間以上冷凍するとトキソプラズマは死滅する
まとめ
トキソプラズマ感染症で気を付けないといけない状態は、妊娠中に初めてトキソプラズマに感染した場合です。
妊娠前の方は、
- トキソプラズマの抗体検査を受ける
妊娠中の方は、
- ネコに近づかない
- ネコのフンに触れない近づかない
- 砂場、畑、庭、触れない近づかない
- 生肉などは食べない
などに注意をして元気な可愛いかまってちゃんを笑顔で迎えて下さい。
いずれも、免疫力が低下することで影響が大きくなりますので、栄養のある好きなモノをたくさん食べて下さいね!
作り笑いでも、免疫力がUPするってご存じでしたか?ホントのはなしです。笑!
参考文献
国立感染症研究所 NIID トキソプラズマ症とは
厚生労働省検疫所FORTHホームページ リステリア症 (ファクトシート)
内閣府ホームページ 食品安全委員会e-マガジン
佐賀大学医学部病因病態科学 トキソプラズマ
ユニ・チャーム㈱妊娠中のトキソプラズマ感染 症状と検査、対策について
横浜市ウェブサイト トキソプラズマ症について