国立研究開発法人である科学技術振興機構は、1999年の統計で国内のパーキンソン病患者数が12万6千人とし、現在の日本の患者数は約20万人程度と推定されています。
年齢とともに患者数は増加し、特に65歳以上の100人に1人はパーキンソン病になるとしています。今後は超高齢化社会を迎え、急激な増加が予測されています。
パーキンソン病はどのような病気なのかを詳しくご存じの方は少ないかも知れませんが、1996年のアトランタオリンピックの開会式に、伝説の世界ヘビー級王者だったモハメド・アリが震える手で聖火台に点火した姿を見た方もいらっしゃるかと思います。
そうなんです、モハメド・アリはパーキンソン病を患っており、その震えこそがパーキンソン病の症状だったのです。日本では放送作家で有名な「永六輔さん」や、芸術家の「岡本太郎さん」や「小森のおばちゃま」フォークシンガーの「はしだのりひこさん」「高島忠夫さん」「落合博満さん」「みのもんたさん」などがパーキンソン病でした。実は、私の母もパーキンソン病を患い、50歳という若さで他界しました。
私にとっては、昔から耳にしている病名ですが、確か昔はパーキンソン病ではなくて、パーキンソン氏病と聞いていた記憶があります。そのパーキンソン病のことは、今一つ詳しく知ることを避けていたようにも思っていたので、この機会に母がどのような状態だったのかを紐解いていこうと思いました。
今日は、パーキンソン病とはいったいどんな病気だったのか?母を見ていた症状も思い出しながら調べてみたいと思います。『どんポジ』のポジいいます!
パーキンソン病とは
「パーキンソン病(PD:parkinson disease)」は難病に指定されている病気で「指定番号は6」です。私が発症した「原発性アルドステロン症」は、2015年(平成27年)6月までは「障害者総合支援法の対象となる難病」に属していた珍しい病気でしたので、親子で難病ゲットだったのですね!笑
パーキンソン病の主な症状は、安静にしている時に意識なく手足が震え、歩く時は前のめりになり歩幅が狭く、小走りするように歩きます。筋肉がこわばり身体の動きが徐々に悪くなり、バランスを崩してよく転ぶようになっていきます。
パーキンソン病の一番の特徴は、やはり振戦(ふるえ)です。私の母も手が震えていたという記憶です。
私たちの体は、脳から筋肉に指令を出して体の動きをスムーズにしています。この指令を調節している神経伝達物質の1つに「ドバミン(Dopamine:ドーパミン)」という物質があります。
パーキンソン病はこのドパミンがより減少することで発症する病気なのです。(逆にドパミンが増えすぎると総合失調症が生じるといわれています)
高齢になるほどパーキンソン病を発症する割合が増えるのですが、40歳以下でも発症することもある若年性パーキンソン病もあります。私の母は今でいう、若年性パーキンソン病だったようです。
現在でも難病であるパーキンソン病ですが、実は今から200年以上前に発見されていた病気なのです。1817年にイギリス、ロンドンの医師そして地質学者である、ジェイムズ・パーキンソン(James Parkinson)氏がこの原因不明の症状の人たちがいることに気づき、症例を学会に論文として報告しています。
論文の内容は、身体が固くなり、手の震え、前のめりの姿勢、徐々に動けなくなるという原因不明の症状の病気が一群にいることに気づき、その6名の患者さんの観察記録で臨床に基づく研究を続け、「振戦麻痺に関する試論(Essay on the Shaking Palsy)」という小冊子を出版し、論文として学会に報告しました。
しかしながら、学会はこの論文にまったく注目せずに埋もれていました。そして、数十年後にジャン=マルタン=シャルコーという著名なフランスの病理解剖学の神経学者が、ジェイムズ・パーキンソン氏の論文を発見し、業績をたたえ、ジェイムズ・パーキンソン氏の名前から「パーキンソン氏病」と名付け、世に知らされることになったのです。
ジェイムズ・パーキンソン氏の誕生日が1755年4月11日生まれなので、4月11日は「World Parkinson’s Day(世界パーキンソン病デー)」とされています。
私が昔、耳にしていたころは、やはり「パーキンソン氏病」と言っていたようです。いつから変わったのかなぁ・・・笑
日本国内の人数
1999年パーキンソン病患者数は、全国で126,000人で、現在では約20万人と推定されていますが、今後は高齢化が進み患者数はアルツハイマー病の増加を凌ぐ急速な増加傾向にあるとしています。
この数値には、発症していても初期で気づかない場合や症状が軽く生活にも支障がない理由で受診をしていないパーキンソン病有病者は含まれておりません。
日本国内では、女性に多い傾向がありますが、海外では逆に男性に多い病気です
原因
先ほども少し触れましたが、パーキンソン病は神経伝達物質であるドパミンが減少することで発症します。なぜ減少するのか、パーキンソン病の根本の原因は未だ不明です。
ドパミンをつくる神経細胞は脳の中でいくつかに分けられますが、その1つに中脳の黒質という部分があります。
中脳の位置は、大脳を支えているように見える棒のような幹の総称を脳幹といい、その脳幹の一部に中脳が位置しています。パーキンソン病はその中脳にある黒質で作られるドパミン神経細胞が減ってしまい、運動がスムーズにいかなくなると考えられています。
脳幹とは、
- 間脳(視床・視床下部・下垂体など)
- 中脳
- 橋
- 延髄
の、4つから成り立っています。
脳の図をわかりやすく編集してみました。(⇩下図)
延髄と脊髄は繋がっていますが、脳の一番下が延髄とされていますので、延髄は脳の一部です。しかし、延髄と脊髄に構造的な臓器壁などの境界線もなく、機能的にもあまり差はないということです。
症状
母の症状を思い出すと、一番は手の震えでした。
母が元気なころは、小学校低学年の私の足にめがけて投げたドッチボールでよく転ばされて、二人で大笑いしていた楽しい想い出があります。
しかし、徐々に外出も少なくなり、小学校の3年生あたりから毎日の買い物は私の係になっていきました。メモを渡され買い物に行くと同級生の女の子と母親の買い物にバッタリ会うのがとても恥ずかしくて、当時は買い物に行くのがとてもイヤでイヤで母にふてくされていたのを思い出し、今ではとても後悔しています。
家の中でも長く立っていられなくなり、台所にイスを持って行き、座りながらお米を研いだりしていましたが、それも徐々に寝たきり状態に近づいていきました。
ここで、パーキンソン病の一般的な症状をピックアップしてみます。
- 何もしていない時に、手や足が震える
- 身体全体の動きがスムーズに動かなくなる
- 前のめりに歩くようになる
- 歩幅が小さくなり小走りのように歩く
- 初めの一歩が出ずらくなる
- バランスが崩れやすく、転びやすくなる
- 動作がゆっくりになる
- 筋肉がこわばり手足が動かしにくくなる
- 歩く時に腕の振りが少なくなる
- 左右のどちらかだけ動いたりする
- 手の震えなど、症状の左右差がある
- 就寝中に寝言や大きな声をだしたりする(レム睡眠行動障害)
- 臭覚が低下している
- 指先の細かい動作が苦手になる(シャツやパジャマのボタンなど)
- 表情が乏しくなる
- 瞬きが減る
- 話し方も小声で単調になる
診断・検査
上記の症状があるからといって、すぐにパーキンソン病だということではありません。パーキンソン病の典型的な症状があれば、専門医の診断は容易らしいのですが、初期症状で震えだけの場合の診断はとても難しい病気です。
パーキンソン病に似た症状がある他の病気や、薬の影響で表れた症状がパーキンソン病の症状に似ている場合など、パーキンソン病以外の症状などを全て取り除いたり、パーキンソン病治療薬が有効がどうかなど、あらゆる角度から総合的に診断しないとわかりずらい病気なのです。
パーキンソン病の診断では、一般的なCTやMRIなどでの脳の画像診断では発見しずらく、決め手となる検査がありませんでした。
しかし、現在は精度の高い診断が可能になり運動症状が発症する前に、ドパミンの減少などを確認することもできるようになってきています。
そのいくつかを簡単にご紹介します。
- SPECT(single photon emission CT)/ PET(positron emission tomography)
特殊なコンピューター断層撮影で脳の断面の血流状態がわかり機能低下部位を確認できたり、薬剤を使った反応もみます。 - ドパミントランスポーターシンチグラフィー(DaT Scan)
薬剤を使い、ドパミントランスポーターの分布状態を画像化し、三日月形(カンマ形)か左右非対称かを見れます。 - MIBG心筋シンチグラフィー
MIBGという物質を注射し心筋への取りこみの低下を見ることで、パーキンソン症候群の識別が可能になります。
最新の診断技術に加え、普段の細かい症状と経過を見て診断します。
治療
パーキンソン病の治療の基本は、薬物療法で、1つはドパミン神経細胞が減少し、少なくなったドパミンを補充してやればいいのです。
しかし、脳は特に重要な部分ですので、血液からの病原体や有害物質が脳に侵入しないように、バリア(血液脳関門:Blood Brain Barrier))で厳密にコントロールされているので、脳以外で作られたドパミンは脳内に入っていけないので補充することができません。
足りない分のドパミンを薬として投与しても血液脳関門を通してくれないので、効果がないのです。
しかし、しかし、しかし、レボドパ(L-ドパ)という薬は血液脳関門を通してくれるのです。
このレボドパ(L-ドパ)という薬は、この時点ではドパミンではありませんが、血液脳関門を通過した後に、脳の中でドパミンに変化してドパミン量を増やすことができるのです。つまり、レボドパ(L-ドパ)はドパミンになる前の前駆体なのです。
実際、パーキンソン病の患者にレボドパ(L-ドパ)を投与した2~3時間後に症状が良くなったとされる報告もあり、ドパミンがパーキンソン病に効果があることを立証できたとのことです。
「L-ドパ(レボドパ)」は、最も強力なパーキンソン病治療薬といわれていますが、その副作用を克服するために開発された「ドパミンアゴニスト」や、最初に使われていた「抗コリン薬」など数多くの薬を組み合わせて治療していきます。
危険性が高いといわれていた手術療法でも希望する人が多かった時代がありましたが「L-ドパ(レボドパ)」が開発されてからは激減しました。しかし、L-ドパ(レボドパ)も長期間服用すると問題点もあることから手術療法も見直されたりしたということです。
最先端医療では、iPS細胞でパーキンソン病で減少した神経細胞を補う治療法も研究開発が進めらており新しい治療法に大きな期待がかけられています。
現時点では、根本的にパーキンソン病を治す治療は確立していませんが、今の時代、明日になったら簡単に治る治療が見つかる可能性もあるのです。
パーキンソン病の遺伝
パーキンソン病のほとんどは家族には遺伝しない孤発性パーキンソン病といわれていますが、若く発症される患者さんの一部に家族内にパーキンソン病の方がおり、遺伝子が確認されることがあります。
患者の5%~10%ほどは親から子供に遺伝する、遺伝性(家族性)パーキンソン病と考えられています。
順天堂医院脳神経内科では、世界に先駆けてパーキン遺伝子を発見し、病気の全体の原因や新しい治療の開発に取り組んでいます。
まとめ
母は当初、自宅近くの個人病院に通院して、パンパンになった薬袋を持ち帰っていた記憶があります。
その病院は、ごく普通の内科医院で、私も小さなころに受診をすると引出しから棒の付いたアメを貰ったのを覚えています。
今では、どのような症状でどんな薬が処方されていたのかは知るすべもありませんが、その時代のその個人病院で診断の難しいパーキンソン氏病と診断されて薬が処方されていたとは、とても思えません。
今思えば、薬の副作用も加わりどんどん体調を崩していったのではないかと勝手に考えたりしています。
私の次の記憶は、母が大学病院に通院したり入院したりしていたことです。その大学病院でパーキンソン氏病という病気を始めて聞いたような気がしますが、何十年も前のことなので大学病院と言えど正確な診断と治療ができていたのかも定かではありません。
パーキンソン病は直接の死因になる病気ではありません。母も結局自宅で転倒し、その大学病院に運ばれたのが最期になりました。ホント親孝行は早めがおススメです。笑!
今なお、難病に指定されている病気のパーキンソン病ですが、200年前と同じではありません。世界中で日々、パーキンソン病が解明されているのです。母も現在であれば治療をしながらもっともっと楽な生活、楽しい生活が送れていたと思います。
私の原発性アルドステロン症が原因で起こった脳出血の後遺症は右半身麻痺ですが、脳出血で死滅した神経細胞がいつか簡単に新しい細胞で繋げることができ、麻痺が完全に無くなる日が来るかも~!?と、真面目に期待しています。もう7年も経っていますが・・・まだまだ希望は持って・・・。笑!
病気に限らず、本人がチョット辛い時こそできることは、楽しいこと、明るいことを考え、そして想像して、笑顔を増やすことです。笑うだけでも免疫力が高まるエビデンスもあり、ドパミンも増えるのです。コレはすべて気休めではありません。そして、コレすべて無料で可能です!お得です。笑
最後までお読みいただき、大変ありがとうございました。
どんな時もポジティブに!の「どんポジ」でした。
参考文献
国立研究開発法人 科学技術振興機構 パーキンソン病の有病統計と死亡統計の関連性 ~地域分布の比較~
福岡パーキンソン病診療センター パーキンソン病はまれでない、しかし怖くない
公益財団法人日本医療機能評価機構 パーキンソン病 Minds版やさしい解説
順天堂大学 大学院医学研究科 老人性疾患病態・治療研究センター 新規パーキンソン病の原因遺伝子の発見
順天堂医院 脳神経内科 変性疾患部門(家族性パーキンソン病)