黄砂の1~2日後に「常位胎盤早期剥離」の出産が増加!
東邦大学、九州大学と国立環境研究所の疫学研究グループが、人を対象としたデータの分析成果で、妊婦が黄砂にさらされることが常位胎盤早期剥離(以下:早期剥離)のきっかけになるとの関連性を示し、産科婦人科学専門誌(BJOG: An International Journal of Obstetrics and Gynaecology)に世界初の論文として2019年10月26日に発表しています。
出産前に胎盤が子宮からはがれてしまう早期剥離が、黄砂が飛来した後に40%増加しました。これは黄砂がない日の1.4倍になります。
また、妊娠35週以降の緊急分娩に絞ると黄砂と早期剥離の関連性はより強く増加率は60%となり、黄砂がない日の1.6倍となりました。
早期剥離自体が全妊婦の約1%ほどの発生といわれていますので、無駄に不安を煽る内容ではなく、黄砂の影響を知ることで少しでも対策ができればと思っています。『どんポジ』のポジといいます!
早期剥離とは?
早期剥離とは、出産後にはがれてくるはずの胎盤が、通常20週以降赤ちゃんがお腹にいる時に、はがれてきてしまう産科的緊急事態となりえる状態をいいます。
母体は、子宮内の出血によってショック症状を起こし、赤ちゃんには酸素が届かなくなるので、基本的には緊急帝王切開となることが多い状態です。
いつ頃起きる
早期剥離は全妊娠の0.49~1.29%の発症で、誰にでも起こるトラブルではありません。
発症時期は、22週以降から41週までの全期間で発症しますが、発症頻度のビークは妊娠36週とされ、34週から38週の間で全発症の1/2を占めていますので特にこの時期は注意が必要です。(一般社団法人 関東連合産科婦人科学会「データベースからみた常位胎盤早期剥離」2014年 より)
早期剥離の危険因子
早期剥離の危険因子は、妊娠高血圧症候群の影響が多いと考えられていましたが、実際は全体の10~15%(公益社団法人 日本産科婦人科学会 データより)とわかってきました。他の因子の一部としては、
- 前回剥離の既往
- 母体の高齢
- 喫煙(受動喫煙含む)
- 血管疾患
- 切迫早産
- 前期破水
- 羊水過多
- コカインの使用(最大10%のリスク)
- お腹への衝撃(怪我や事故)
などとされていますが、原因不明のケースも多く早期剥離の原因は解明されていません。また、発症の予測も困難といわれています。
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黄砂と早期剥離の関連性
研究内容
黄砂が全身性の炎症を引き起こし心筋梗塞や脳梗塞などの急性疾患に繋がるという指摘から、妊婦も黄砂によって炎症をきっかけに早期剥離を起こしやすくなるのではないかとの仮説から研究が始まりました。
研究対象
- 研究対象地域
宮城県、茨城県、千葉県、東京都、新潟県、富山県、大阪府、島根県、長崎県の9都府県 - 協力病院
113の病院 - データ対象
単胎(赤ちゃんが一人)出産妊婦 3,014人
調査期間
2009年~2014年の6年間に黄砂が飛んできた日を定めて調査
結論
黄砂は大気汚染物質(有害物質)や微生物を吸着して大量に日本に降り注いできます。
この微生物の中には妊婦に炎症を引き起こし早産の原因になると知られている「リポ多糖」が含まれていると考えられ、黄砂に吸着した大気汚染物質(特にグラム陰性桿菌外膜のリポ多糖や二酸化窒素)による炎症が早期剥離に繋がっている可能性があるとしています。
わかりやすく言いますと、黄砂は早期剥離に影響する微生物が含まれているので、黄砂が飛んできている時は、なるべく皮膚や体内に黄砂を取り込まないようにということです。
まとめ
早期剥離の原因は解明されていませんが、危険因子での喫煙(家族の喫煙も含め)や薬物、お腹への衝撃は早期剥離に限らず、妊婦さんは気を付けていることだと思います。
冒頭にお伝えしましたように、黄砂の飛来と早期剥離の関連性が認められたことで、危険因子に黄砂が1つ加わったということでしょうか!
しかし、黄砂も喫煙やお腹への衝撃のように、ある程度は気を付けることが可能です。コロナ禍でよく耳にした「不要不急の外出を控える」は、黄砂の予防対策としても、とても有効だといえます!
黄砂が多い日を予測する黄砂予報も今では簡単に情報が手に入りますので、特に長く外出しないといけない場合はちょっとだけ下記の環境省のサイトを見て確認してみてはいかがでしょうか!
環境相大気汚染物質広域監視システム「そらまめくん」
https://soramame.env.go.jp/
環境省 黄砂飛来情報「環境省の黄砂観測ライダー」
http://www2.env.go.jp/dss/kosa/
赤ちゃん!子ども!妊婦さん!みんな宝です。大切にしたい!
最後までお読みいただきありがとうございました。
どんな時もポジティブに!の「どんポジ」でした!
参考文献
発表論文: Exposure to Asian dust within a few days of delivery is associated with placental abruption in Japan: a case-crossover study「分娩後数日以内のアジアの粉塵への曝露は、日本における胎盤早期剥離と関連している:ケースクロスオーバー研究」
国立研究開発法人国立環境研究所 東邦大学 九州大学:「黄砂飛来の数日後に常位胎盤早期剥離が増加
~人を対象とした疫学研究の成果~」
一般社団法人 関東連合産科婦人科学会 データベースからみた常位胎盤早期剥離